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―――「綺麗な本……」
少女はポツンと呟いて、綺麗な表紙の本を開きました。
そこに記されていたのは、お世辞にも倖せとは言えない哀しい物語。そう、それは………
「『結び目の呪い』」
少女は本の言葉を紡ぎます。
「『結び目の呪いには
特別な力が宿ると
言われていました
呪いとは
すなわち契約の儀
誓いとともに
相手の束縛も
意味するそれは―――
互いを想う心を糧として
より強固なものへと
変化してゆくのです
…そう
死が 二人を別つまで―――――――――』」
幼い少女は、その言葉に秘められた何かに涙を流しました。
「アズリ?」
「!―――。」
一人の少年が泣いていた少女に声をかけました。
「何で泣いていたのですか?」
「……このお話が…とても哀しかったから…。」
「哀しい…?」
「うん…とても……。」
少年は少女の持っていた本を静かに受け取りました。
「『結び目の呪い』…か。アズリは…魔術の才能があるのかもしれませんね。」
「『才能』……?」
「いえ。こっちの話です。」
少年は優しく微笑します。
「…ねえ、―――。何で…こんなに哀しいのかな……。」
少女は少年に尋ねました。すると、少年は静かに口を開きました。
「…元々『結び目の呪い』と言う物は、西洋魔術からきているんです。『術師が豊作の風邪を縛って捕まえた。』―――なんて記述が本に残っていますから。そしてそれは……
―――あいての意識を縛る術…。何か感じるものがあったんじゃないですか?だから哀しかったのでは?……安っぽい恋愛小説なんかよりも、よっぽど神秘的で、そして…悲しい物語ですから。」
少年は哀しそうにに笑いました。
「―――は、哀しいの……?」
「え……?」
「…いつも哀しそうな顔してる。」
それは―――と、口を開きかけて少年は躊躇しました。
「…アズリ。」
少女はキョトン、と首を傾げます。
「例えばね…それは『束縛』。愛する者を縛り付けたいが為の束縛なんです…。アズリにも…いつか、愛する者が出来ます。その時になれば…きっと…解りますよ。」
少年はそう言って、少女の柔らかい髪にそっと唇を落としました。
「今なら…解るかもしれないなー。―――が言っていたこと……。」
大切な人を失った今なら……。
愛する者が出来た今なら……。
守りたい者の居る今なら……。
「愛しているからこその「束縛」。それが……
―――――――『結び目の呪い』」
それはとてもとても………哀しい物語。
――――ねえ、僕と…終わらない物語を紡ごうか……。